ダブルセイバー。一般的に広く使われている剣、セイバーを二本そのまま柄の部分同士繋ぎ合わせた様な武器である。
柄の両端からフォトンの刃が伸びており、その刃をうまく振り回せば通常のセイバーよりも攻撃の手数を増やす事が出来る。
振り回す事で弧を描くフォトンの煌めきも美しく、見た目の派手さと格好良さはなかなかの物だ。
だが、愛用者は少ない。
理由は至って簡単。この武器は扱いが非常に難しい上に、その難しさと強さが必ずしも比例するわけではないのだ。初心者ならば、普通に一太刀振り下ろすだけでも四苦八苦するのは間違いない。
一番の難点は、やはり両端に刃がある事だろう。
片方の刃を振り下ろせば、柄を軸に逆側の刃が振り上がる。この逆側の刃が邪魔になり、通常のセイバーのようには振り下ろせないのだ。
それを回避する為には、手で握る柄を中心に回転させるよう振り回すのが一番良い。言い方を変えれば、それしかない。
そして二番目の難点は、この回転にある。
両手で棒状の物を回転させるには、手首のひねりと素早い持ち替えが重要。これを器用に行いながら、目標目掛け斬りつけるのだから・・・そう簡単ではない事くらい誰にでも想像できるだろう。
そして最後の難点は、器用に行わなければならない持ち替えを行う部分、つまり柄の部分があまり長くない事。
例えばパルチザンのように柄が長ければ、状況に応じて様々な形,場所に持ち替えられる。だが、ダブルセイバーの柄はそこまで長くはない。全体的に見ても、刀身の片側だけでも柄より長い作りになっているのだから。
短い柄を巧みに持ち替えながら、回転させ攻撃する。言うは易く行うは難し・・・確かに見た目は格好良いかもしれないが、そう手軽にその格好良さは得られない。
(・・・という事を、どこまで理解しておるのやら・・・)
目の前には、偶然拾ったダブルセイバーを夢中で振り回す子供が一人。
失礼。子供と言うには丁寧すぎた。
小僧が一人。
いや、腕白坊主か?
・・・名称などはどうでも良い。ともかく、必死にダブルセイバーを使いこなそうと汗だくになっているハンターが一人いた。
名をアッシュという。
そのアッシュを、一人の老人が見つめていた。
失礼。老人と言うには乱雑すぎた。
英雄が一人。
いや、鬼軍人か?
・・・彼も又、名称などはどうでも良いだろう。ともかく、若いハンターを見守る熟練のハンターが一人いた。
名をドノフという。
(筋は悪くないのじゃがなぁ・・・)
汗だくになりながら、ダブルセイバーを振り回し続けるアッシュを見ながら、心の中で一人愚痴る。
今彼は、この若者に「技」を叩き込んでいる。
そう、「教えている」というよりは「叩き込んでいる」と表現した方が適切であろう、指導を行っている。
ぜぇはぁと、アッシュはこれまでダブルセイバーを振り回していた手を膝の上に重ね、前屈姿勢で喘いでいる。
かれこれ二時間。アッシュはひたすらに使いこなそうと必死になっている難儀な武器を振り回し続けていた。
「終いか?」
一言、アッシュの師匠は声をかけた。
勘弁してくれ。目ではそう師匠に訴えていたが、けして口からその言葉が出る事はなかった。
このやりとりが、二時間の中で何回かあった。そして、アッシュはまた武器を振り回し始めた。
自分から終わりにするなどと口にしない。それはアッシュが師匠の叱咤を恐れている事もあるが、何より自分からこの修行を終わらせる事が許せなかった。
この強がりが、アッシュの欠点であり長所である。それを見抜いている師匠は、ただ見守るだけで修行を行わせている。
しかし、これを指導と呼べるのだろうか。ふと自分のやり方に疑問を持つ事もある。
鬼軍人。何時しかそう呼ばれるようになったのも、こんなやり方でしか指導できない不甲斐なさの表れかもしれない。
(今更・・・ワシはヒースのようにはいかんよ)
絶対的な信頼感と適切な指導。かつて三英雄として並び称された親友、ヒースクリフ・フロウウェン。
彼には一人の愛弟子がいた。彼女は後に「赤い輪のリコ」として、師と同じく英雄と呼ばれるようになる。
元々、彼女は才女であった。理論的なヒースの戦術を全て理解し、それを実践できるだけの身体能力を備えていた。
そう考えれば、リコの師がフロウウェンでなくとも、彼女は英雄になれたかもしれない。
いや、ドノフはヒースだからこそリコが英雄になれたと確信している。
ともすれば、リコのような才女は師の模造品になってしまう事が多い。全てをそのままに吸収すれば、それは当然の結果だ。
しかし、リコはフロウウェンの模造品にはならなかった。それは、そうならないようフロウウェンがきちんと指導していたからに他ならない。
リコの長所に己の知識と技を与える事で、己以上の英雄を育て上げた。師としてこれ以上の極みと幸福はないだろう。
それを、さて自分にも行えるか。ドノフは己に問いかけ、そして「否」と答えをすぐに導いた。
まず、リコとアッシュでは雲泥の差がある。
いや・・・その根本的な違いは、ひとまず置こう。
むしろ根本的に違うのは、自分とヒース。
フロウウェンは死の間際まで陸軍副司令官を務めていた。戦場の全体を見極め、部下一人一人に的確な指示を行いながら、自身も最前線で剣を振るってきた英雄。
対してドノフも、最前線でフロウウェンに負けずと奮起していた。だが、彼は指揮権を持った事は一度もない。
三英雄が名の通り、三人で栄光を欲しいがままに勝ち取ってきた頃。ドノフはフロウウェンの作戦に従う事が多かった。
頭で考える事を得意としなかったが、しかし任された任務は確実に、時にはそれ以上の成果を必ず得てきた。
二人とも強かった。しかし強さの根本が違っていた。
その違いは、指導方法の違いとなって現れている。
(技は理屈より身体で慣れろ・・・しか、ワシからは言えんからのぉ・・・)
指揮の旨かったフロウウェンは、全ての事を解りやすく伝えるのも旨かった。彼なら、愛弟子がリコでなくとも英雄の一人や二人、生み出していただろう。しかし指揮を不得手としていたドノフは、言葉で技を伝えるのも苦手だった。
そもそも、細かい事をごちゃごちゃと説明するのが面倒くさい。良く言えば「豪快」なドノフは、性格面からして指揮官には向いていないのだ。
しかし指導者として向いていない、とは言い切れない。
「くぅっ・・・はぁ・・・」
乱れた呼吸が、アッシュの口から時折漏れ聞こえる。
(頃合いか・・・)
不意に、ドノフはアッシュの眼前に歩み寄り、手にしていた大剣を片手で振り上げた。
「あっ!」
甲高い音が当たりに響き、アッシュは手にしていた愛用品を飛ばされた。
「どうした」
呆然とするアッシュに、ドノフは一言だけ言い放った。
突然何をするんだ。視線で抗議するも、それが聞き入れられる相手ではない。アッシュは黙って飛ばされた両剣を拾い、再びそれを振り回し始めた。
それからドノフは不定期に何度も、アッシュの両剣をはじき飛ばした。
何故このような事をするのか。その説明は無い。
ドノフの理不尽で理解できない行為に疑問を持ちながらも、アッシュは修行を続けるしかなかった。
初めは不意打ちだったが、何度もやられる事で徐々にはじき飛ばされる事を意識し始めるようになるアッシュ。次は飛ばされまいと、柄を握る手に力がこもる。
しかし、この込める力が上手く出せない。
疲れている事もある。しかしそれ以上に、柄を握る事そのものが難しいのだという事に気付き始めた。
いや、気付いたと言うよりは身体が覚え始めたと言うべきだろうか。
ダブルセイバーを常に回転させるという事は、逆に柄を常に両手で握りしめているわけではない、という事になる。
目標物を斬りつける時は、意識して両手で握りしめている。力を込める為に。しかしダブルセイバーを回転させる事に集中すると、必ず片手だけで握っている瞬間が出来る。
手首をひねり、これ以上ひねれないところで一度手を離し、手首を戻し持ち替える。こうしないと一方向に回転し続けられない。この手を離す瞬間は最も力が入れにくい瞬間。ドノフはここを狙ってはじき飛ばしてくるのだ。
両手で握っていれば、どうにかはじき飛ばされることなく握っていられるだろう。はじき飛ばされない為には、手を離す瞬間を出来るだけ無くす事。
しかしそれは無理だった。どうしても手を離す瞬間は訪れる。そこを巧みに、ドノフは突いてくる。
ではどうすれば良いのか?何も思いつかない苛立ちから、眉間にしわを寄せ唇を噛みしめる。
「お前はその剣でブーマを狩る時も、そうやって同じ事を繰り返すのか?」
悔しがるアッシュを見かねてか、ドノフが一声かける。
同じ事を繰り返す?馬鹿な。ブーマが剣をはじき飛ばすなんて芸当をするはずがない。
では何を繰り返しているのだ自分は。
ようやく、アッシュは気付いた。何を繰り返しているのかに。
よく考えてみたら、二時間以上も同じ事を繰り返していたではないか。
今こうしてダブルセイバーを振り回しているのは、ドノフに言われて始めた事。
まずは手に馴染ませろ。そう言われたから。
それを何故今、繰り返すのかと問う?
やれと言ったのはあなたじゃないか。なのになんだって・・・アッシュはドノフが自分に何をさせたいのか、全く理解できなかった。
こっちは同じ事を二時間以上も繰り返してきたんだ。それも今日だけじゃない。ここ数日、ずっとだ。なのに・・・憤りだけが、アッシュの胸中を駆けめぐった。
止めてやる!武器を投げ出し、そう叫びたかった。しかしそれを言い出したら、自分の負け。アッシュは怒りを隠さずとも言葉だけはけして口にしなかった。
ずっと、ただ振り回すだけの練習。折角かの英雄が見てくれるというのに、手合わせもしてくれない。これに何の意味がある?
かと思えば、ちょっかいを出してきた。手合わせはさせてくれないのに、だ。
(・・・ちくしょう。意地でもどうにかしてやる)
負けん気の強さが前面に表れた。
とにかく、どうにかしなければならない。が、どうすればいいのか?
ドノフは言った。いつまで同じ事を繰り返す気か、と。
裏を返せば、別に同じ事を繰り返さなくても良い、ということになる。
剣を弾く時、ドノフはタイミングを見計らっている。それは何度もやられた事でよく判った。
このタイミングをずらせばいいのか?よく考えれば、ずっと同じ動作をしているから見抜かれるのだろう。
ならば不規則な動きを加えるか。しかしそれはそう簡単に出来るものではない。
何度も繰り返し振り回した事で、アッシュはダブルセイバーを回すコツを自分なりに見つけ出していた。何時間も何日もやらされれば、さすがに身体が勝手に覚えてくれるようだ。
振り回すコツが解っているだけに、そこへ不規則な動きを加える事の難しさも理解していた。
コツは、勢いを殺さない事。勢いを利用する事で、振り回し続けている最中も力まずに続けられる。だからこそ、不規則な動きを加える、例えば急に止めたり反対方向に回したりなど、勢いを殺してまで別の動作をさせる事が難しくなる。
勢いを殺さずに、克つ同じ動作をしない。
どうにか答えらしき物は導き出せたが、どうすればいいのかが解らない。
訊くか?いや、それは負けを認めた気がして出来ない。
止めたり反対に回したりする以外で、何か他に・・・。
考える事に集中しすぎた為か、またしてもアッシュはダブルセイバーを弾かれた。
くそっ、こっちは色々手一杯なのに!
頬を膨らませ、弾かれたダブルセイバーを取りに走るアッシュ。
ふと、ある事に気付いた。
弾かれた方向が違う?ダブルサイバーが落ちた場所が、先ほどまでほぼ同じだったところではない。逆方向だ。
(・・・あ、そういう事か)
気が付けば簡単な事だ。アッシュは愛剣を拾い上げると、気付いた事を早速試してみた。
(ほほう・・・やっと気付いたか)
アッシュはずっと、同じ動作で振り回し続けていた。
両剣を含め全ての剣を扱う上で、袈裟懸け、つまり右上から斜め下に振り下ろす動作は基本的な斬り方。これを考慮し、右上と左下の斜め方向に腕を動かしつつ、両剣を回し続けていた。
それを、今度は左上から右下、つまり腕を反対に動かし始めたのだ。
簡単な事だ。剣の動きは止めずに、腕を違う方向へ動かせばすむ話だったのだ。手首の返しと持ち替えはこれまで通りにしながら、腕の位置を変える事で、ある程度自在に動かせる。
もちろん簡単なのは理屈だけで、実行するのは難しい。
単純に反対になっただけで、持ち替えるタイミングから位置から、これまでと全く違う感覚を要求される。
アッシュはこれに戸惑った。だが、感覚は違えど基本は同じ。すぐに戸惑いも納まった。
それもそうだ。同じ事をやらされ続ければ嫌でも身に染みつく。コツも、身に染みた基本からすぐにつかみ取れるようになる。
これがドノフの狙いだった。身体で覚えるとはこういう事だ。
ドノフは理屈で教える事を苦手としているが、教わる側も理屈で指導されるのが苦手だ。
だからこそ、ドノフは「こうしろ」と直接指導しない。徹底的に身体に覚えさせ、そこから少しずつ自分で考えるように導く。
だが、教わる側は戸惑う。何をして良いのか全く解らない上に、やっている事の意味も解らない。そうなると指導者に対し不満ばかりが募る。
事実、アッシュはドノフに対し不満を募らせ続けている。
不満は不信に代わり、そしてそれが爆発した時、師の元を去る事となるだろう。
厳しいだけの訓練。スパルタ的なやり方ばかりのドノフは、そうして「鬼軍人」と部下から呼ばれるようになっていた。
ヒースのようには行かない。その度に、ドノフは不器用な己を攻めていた。
だがここにきて、ドノフはやっと愛弟子に巡り会えた。
それが、アッシュである。
アッシュもこれまでドノフの教えを受けた者達同様、ドノフのやり方に不満を持ち、不信感を募らせている。
だが、彼がドノフの元を離れる事はない。そう彼の師は見抜いていた。
アッシュは負けん気が強く、意固地だ。自ら止めるとは絶対に言わないだろう。
続けていれば、やってきた事の意味にも気付く時が来るだろう。来なかったとしても、身体がその意味に気付くはず。師として仰がれなくても良い。憎まれても良い。とにかく、技を伝えられればそれで良い。
巧みという魂を、伝えられればそれで良い。
(しかし・・・そろそろ限界か)
得意げな顔のアッシュをあざ笑うかのように、ドノフはまたしても両剣をはじき飛ばした。
「方向を変えたところで、動きが同じではすぐに見抜かれるわい」
とは言え、応用する事へのきっかけを自ら導き出しただけ良しとしなければならない。
絶対に、褒めるなどはしないが。
「そろそろ時間だ。引き上げるぞ」
時間を理由に、今日の稽古を切り上げた。
アッシュは拾い上げた両剣をそそくさと仕舞い込み、ドノフに一礼した後すぐさま立ち去った。
顔を見ずとも判る。相当頭に来ているのだろう。それでも礼を忘れないのは、真面目な弟子らしい一面か。
「もう少し、時間があればの・・・」
愛弟子に巡り会えた幸運は素直に嬉しい。
だが、少しばかり遅すぎた。
「・・・ぐふっ!」
慌て口元を押さえた手。指の隙間からは、真っ赤な鮮血がポタポタと落ちている。
時間を理由に切り上げた訓練。その時間は、アッシュの体力を考慮しての事ではない。ドノフの体力を考慮して計算された時間だ。
限界が近い。それはドノフ自身が一番よく知っていた。
「お、いたいた。爺さ・・・おい、爺さん、しっかりしろよ!」
向かえに来たのだろうか、一人のレンジャーが苦しむドノフに駆け寄り手を貸した。
「バーニィか・・・心配ない。「痛み止め」が切れただけの事・・・」
「なにが痛み止めだよ!アレは副作用が強すぎるから使うなって言われてただろうが」
ドノフが用いた痛み止め。それはスターアトマイザーを常に身体中に巡らせる事で、全ての病を押さえ込む事が出来るという万能薬。病による痛みや体力の衰えまで、まるで無かったかのように押さえ込む事が出来るのだ。
いや、万能ではない。この薬は副作用が強すぎる。
押さえ込まれた病は、薬が切れると同時に再発する。それも押さえ込んでいただけ反動が強く、薬を服用する前よりも病が一気に進行してしまうのだ。
しかもこの薬、そもそもはニューマン用に開発が進められている研究中の薬。それをヒューマンであるドノフが服用すれば、どれだけの副作用が現れるのか・・・。
「使えて・・・あと一回かの」
「馬鹿、もう使うなって。ベッドで大人しく寝てろ」
そう大人しく寝ているものか。それは声をかけたバーニィもよく判っていた。
あと一回。あと一回で、どこまでアッシュを鍛えられるだろうか。
短い命に未練はない。だが、伝えきれない事、残してやれなかった事、そのなんと多い事か。
時間が欲しい。戦場でも命を惜しんだ事のない鬼軍人は、残された時間の短さを惜しんだ。
「バーニィ・・・たしか、見所のあるハンターを見つけた、とか言っておったな」
どうにか自力で立ち上がり、ドノフは問いかけた。
「ああ・・・ゾークさんの最期を見届けた奴だ。俺も奴に救われた・・・」
それだけではない。そのハンターはラグオルでのセントラルドーム爆破事故を解明へと導いている、そうも付け加えた。
「その者と、どうにか接触できぬか?最後に、その者の行く末を見てみたい・・・」
最後。その言葉が持つ意味に気付いたバーニィは、震える手を押さえられなかった。
だが、叶えてやるしかない。止めても無駄なら、英雄最後の望みを叶えてやらなければ。
「ハンターズギルドを通じて、依頼にでも見せかけてみるか。そうだな、魔物一万匹斬りまであと数匹、なんてシチュエーションでどうよ?」
まるで軽い冗談を言うかのように提案するバーニィ。その声はかすれ、瞳から溢れるものを抑えられないでいる。
「任せる・・・」
残された時間。それを、まだ見ぬハンターの為に使う事を決めた。
その者は、間違いなく次世代の英雄となるだろう。
ならば、会わねばならぬ。そして伝えなければならぬ。
言葉ではない。英雄伝などいらぬ。
雄姿。生き様。
漢、それを伝える義務がある。
そして願わくば、次世代の英雄にアッシュを任せたい。自分では鍛えきれなかったあの若者を。
面識もないが、しかしドノフは何故か確信していた。
ラグオルの未来も、そしてアッシュも、その者が導いてくれるだろうと。
(不器用な生き方だったが・・・ワシらしかろう?なぁ、ヒース、ゾーク・・・)
老兵は死なず、ただ消え去るのみ。
そんな生き方、認めるものか。
残さねばならぬ。それが無様でも、英雄と祭られた一人の漢、その姿を。
鬼。バーニィは今、まさに鬼を目撃していた。
誰よりも己に厳しい鬼。残された命を削ろうが、削り取った命の欠片から何が残るかを模索する、英雄という名の鬼がそこにいた。
鬼軍人。その名は、栄光の名として後世に残されていくだろう。
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