novel

No.14 洞見せし者(中編)

 DOMINOが持ち帰った武器。それはBAZZが軍人時代に愛用していた「ヤスミノコフ」と呼ばれている銃器の数々だった。
「随分と渋いのを使っていたんだな。世界大戦時代の骨董品か?」
 実弾、つまりフォトン弾を用いない銃は、現在ほとんど製造されていない。理由は至極明確で、弾切れを起こす可能性のある実弾使用の銃は、弾切れの心配ないフォトン弾使用の銃に比べて使い勝手が悪すぎるからだ。しかも実弾使用の銃は反動が大きいため、扱いが難しい。くわえて、フォトンよりも発射音が派手なために、フォトン銃より勝る点はほとんど無いのだ。
「アンティークモデルなのは確かだが、中身は最新式だ」
 本来は欠点にもなりかねない実弾銃だが、フォトンでは物足りないという「マニア」も少なからず存在する。振動と爆音。それが銃を撃つ実感に繋がる。マニアはそう語る。
「光物質に近いフォトンを強引に圧縮して、実弾に限りなく近いフォトン弾として使用している。薬莢までリアルにフォトンで再現し、弾の発射方法まで同じ構造にしてあり、その結果振動などまでリアル再現されている。にも関わらず、元々がフォトンであるため弾切れの心配が全くない。ついでに強引な圧縮は、弾に絶大なる破壊力と飛距離を与える。下手なフォトン銃より強力になってしまうほどにな」
 これ以上の最高級品があるか? もしBAZZに表情があったのであれば、彼は満面の笑みを浮かべていただろう。
「ただし当然だが欠点もある。強引な圧縮で放たれる銃弾は、過大な反動を生む。そのため相当熟練した腕を持たなければ扱いは困難だ。このヤスミノコフ9000Mに至っては、生身の人間はもとより、精密性を重視したレイキャシールの細腕では到底扱える代物ではない。連続して放たれる圧縮弾の反動に耐えられるのは、俺のような強度を重視した腕でなければな」
 二丁一組のマシンガンを誇らしげに掲げる。まるでこの銃を扱えることそのものを自慢するかのように。
「・・・・・・・・・それなりにつき合い長くなるけど、あなたがここまで語るのは初めて見たわ」
 普段自分から語り出すことが滅多にないBAZZの饒舌ぶりに、皆があっけにとられていた。
「・・・・・・・・・トラップの事もある。俺が先頭に立とう」
 そそくさと、一人先に敵地へと踏み込んだ。

 マグマが川のように流れ、あたりを熱気で包んでいた。今までは。
 転送装置を乗り継ぎ踏み込んだ先は、うって変わり水が豊富に存在していた。豊富すぎるほどに。
「くわっ! なんだこの湿気は・・・」
 熱気で疲労した身体には、心地良いほど涼しい温度ではある。だが、熱気でハンタースーツの下に大量の汗をかいた身体には、あまりにも酷な湿気があたりを包んでいた。
「防水加工はしてあるが・・・ここまでひどい湿気だと結露が気になるな・・・」
 湿度を計測し出た結果に驚きながら、己の身体を気にし始めた。
 熱気による疲労を感じないものの、熱気でオーバーヒートしてしまう可能性があった。人間と違い、身体の異常を「不快感」で感じることが無い分、余計に気を使うのだ。しかも冷却装置で体内の熱暴走を防いでいたことが、ここに来て逆効果を生み出した。冷却装置が働いていたところでこの湿気だ。すぐに装置を停止したものの、結露が発生してしまった可能性もある。
 急激な熱気と湿気で「疲労」している人間達も大変だが、唐突な「故障」で全く動かなくなってしまうかも知れないアンドロイドも、極地での活動はある意味人間以上に大変なのだ。
「湿気だけが珍しいわけでもないわね・・・古代生物をこの目で見るとは思わなかったわ」
 母星では見かけるには図鑑しかないと思われるような、古代種と思われるようなトンボ・・・それが平然と空を飛んでいた。よく見ると、あたりも古代種の一種と思われる始祖草で埋め尽くされていた。
「みっ! 見てください! クラゲが・・・飛んでます!」
 本来は水中をプカプカと漂うクラゲが、全く同じように空中を漂っていた。泳ぐように。むろん、このような光景は母星で見られるはずもなく、図鑑で解説されることもなかった。
「推測ですが・・・この異常な湿気を利用して浮いているのでしょう。言い換えますと、湿気を海として泳いでいるのだと・・・」
 にわかには信じられない話だ。あり得るわけがない。だが、現実にクラゲが空を泳いでいるのだ。
 よく見ると、洞窟の天井からはしきりに雫がしたたり落ちている。どうやら湿気が洞窟の壁によって冷やされ、雫になっているようだ。それだけ、ここが異常な湿気に覆われているのかがわかるというもの。
「ドラゴンまでいるこの惑星に、これ以上驚く物があるとはね・・・」
 学者ならば、興奮のるつぼの中へと舞い込んだところだろう。だが、ハンターである彼女達にしてみれば、尋常ではない光景は恐怖にすらなりかねない。この先に何が待っているのか・・・予測の付かないことで心臓の鼓動を早める。学者の興奮とは違う理由で。
「湿気のせいで薄青い「靄」が発生している。霧にも近い状況だ。十分気をつけてくれ」
 カメラアイに水滴が付かぬよう処置を施しながら、皆に注意を促す。
「やっかいなのはエネミーだけにして欲しいわ・・・」
 気持ちで負けてはいけない。そう思いながらも、愚痴が口から零れてしまう。まるで水滴が垂れるように。
 行く手を阻む敵は、エネミーだけではない。政治的圧力だけでもない。第3の敵が、ハンター達を歓迎していた。

「まったく・・・水が豊富だと、水自体が動き回るようになるのかしらね」
 足下を、水分の固まりが徘徊していた。その水分は意志を持ったかのごとく執拗にES達を付け狙う。
 ピシャっと動く度に水が跳ねる。床一面が大きな水たまりのようだ。いや、今いる場所だけではない。転送装置を越えてきてからここまで、常に床は水浸しであった。洞窟内にある遠浅の海岸・・・その遠さは果てしない。この浅瀬を泳ぐように、脹らみを持った水たまりが徘徊する。
「M! 足下!」
 不意に水分の固まりが盛り上がり、奇妙な形を形成した。と同時に、Mの足下に小さな水たまりが出来る。それもまた不意に盛り上がり、こちらは鎌の形となってMを襲った。
「んっ!」
 寸で、一歩下がり攻撃を回避する。予測の付かない攻撃に戸惑いながらも。
「こっのぉ!」
 実刀が鎌を切断する。が、それは手応えもなく振り切るだけだった。
「どうなってんだよ! ったくよぉ」
 攻撃しても効かず、しかし敵の攻撃はこちらを傷つける。ZER0でなくともジレンマが募るのは致し方ない。
「次に奴が出てきたら、中央の赤い部分を狙え。それが奴の核だ」
 政府が隠していたデータと冷静な観察で、敵を分析していく。
「M。テクニック、特にバータは使うなよ。データによると、奴は冷気を養分に分裂し仲間を増やす」
「了承しましたわ」

 もしもデータがなければ・・・弱点を見つけることは出来たであろうが、戸惑い、疲労が増したのは間違いない。そうでなくとも、環境すら敵に回しているのだ。これ以上の疲労は心にも体にも蓄えるべきではない。まとめられた文字列が、5人の命を救っている。
 じっと、本体が姿を形取るまでひたすら待つ。チャンスをじっと待つ。
「今だ!」
 雫を飛ばしながら、形を表すスライム。その瞬間を見逃さず、双刃と実刀が核へと襲いかかる。
 手応えはあった。だが、加えられたのは一撃。すぐさま形を崩し地面へとまた逃げ込まれた。
「面倒くせぇな・・・」
 打倒方法ははっきりした。しかしそれはあまりにも手間暇のかかる方法。特に短気なZER0には、イライラを募らせるだけになる。
「BAZZ、ダメージトラップの効果範囲は何処まで?」
「ん?・・・なるほど。試してみる価値はあるな」

 ZER0とは違い、ESは攻撃の出来ない時間を思考へと有効に活用していた。質問の真意に気付いたBAZZは、すぐさまダメージトラップを設置し、水たまりがトラップの下へ来たところで自ら爆破した。
 Shoomph!
 ダメージトラップの爆風は、地面を徘徊する水たまりにまで到達していた。テクニックとは違い、純粋な物理的ダメージはスライムの養分になることなく、あっさりと粉砕してしまった。
「OK。こいつらが出た時は俺が処理をする」
 確かな対処法を確立したことで、かなり負担を軽減できた。
「ところでDOMINO。相変わらず照準を合わせるのが少し遅いな」
 スライムが形作った際、ESやZER0はすぐさま攻撃に移れた。だが、DOMINOは認知こそ二人に後れをとらなかったものの、照準を合わせるのが遅れ、攻撃に移る前にスライムは水たまりへと戻っていた。それをBAZZは指摘しているのだ。
「はっ・・・申し訳ありません・・・」
 ZER0の目を気にして敬礼こそしなかったが、上官からの指摘に身が固まる。
「ふむ・・・少しスタイルを変えてみたらどうだ? いっそ、片手で撃つのも悪くないかもしれんな」
「え? 片手・・・ですか?」

 ハンドガンを撃つ際のスタイル・・・姿勢は、主にアイソサリーズスタイルとウィーバースタイルの2つがある。どちらも両手で銃を構える姿勢で、利き目や利き腕などにあわせ、肩の角度や足の開き方が違う2つのスタイルからどちらかを選ぶのが基本だ。ハンター達の間ではウィーバースタイルの方が主流のようだが。
「お前は照準を合わせるのが遅いが、他はなんの問題もない。命中度も高く「ぶれ」も少ないことを考えれば、片手で安定させるのもお前ならもう出来るだろう」
 ハンドガンは銃身が短いために、安定性に欠ける。ライフルが長距離の射撃に向いているのは、銃身が長く安定性が高いためだ。つまりは、ハンドガンはライフルと違いコンパクトで扱いやすい変わりに安定性に乏しいため、両手でしっかりと安定させなければならない。しかし逆を言えば、安定させることが出来るのなら、両手で構える必要はないのだ。実際、熟練者はどんな状況でも銃を構え撃てるように、右でも左でも構え撃つことが出来るよう訓練しているものだ。
「今回はこちらの頭数も多い。お前は牽制の意味も含め、片手のスタイルを試してみろ」
 実戦は最高の練習場だ。だがBAZZの提案は、DOMINOでは戦力にならないということを宣言されたようなものだ。少なくとも、DOMINOはそう思っていた。
「今は無理だが、いつかこいつを使えるくらいの腕前になれ。お前にはその素質がある」
 渡された銃の重みは、BAZZの期待の重みでもある。
 ヤスミノコフ2000H。銃の冷たさが、今のDOMINIOには少し心地よかった。

「思えば、パイオニア1にはおかしなことがいくつかあったわ」
 BAZZがDOMINOを教練指導していた頃、ZER0は新たにメッセージパックを発見していた。BAZZの指導が終わるのを見計らい、リコのメッセージを再生した。
 メッセージの内容は、BAZZが抱いていた疑問と合致していた。
「移民船「パイオニア1」は、そもそも衛星軌道上で解体、地上で都市として再構築できるよう 設計されている。でも、完成したセントラルドームは、当初の設定より12%ほど小さいのよ、これが」
 12%。この数字が、BAZZの測量と寸分違わぬことで確信が持てた。
「やはり・・・そういう事か・・・」
 BAZZの確信をよそに、メッセージは続く
「12%分の物資はどこに使われているんだろうと思ってたけど・・・この先に行けばそれが判りそうよね」
 12%の物資の行方。そこまでははっきりとしないものの、12%の物資がドームに使われていなかった事実がはっきりしただけで、BAZZにとってはかなりの収穫だった。
「・・・どういう事か説明してもらえる?」
 BAZZ一人が確信を持ったとしても、まだ他のメンバーには何のことかわかっていない。リーダーが説明を求めた。
「確証が持てなかったから伝えなかったが・・・以前ドーム全体をスキャンし、設計図と照らし合わせたことがあったな?」
「ああ、ドラゴンと戦う前だな」

 BAZZの説明に、ZER0が記憶をたぐり寄せる。
「あの時のスキャン結果が、実は設計図よりも実際のドームは約12%ほど小さいと出ていた。いや、大きさがではなく、物量的に、だ」
 つまり、リコのメッセージが正しいことを既に証明していたと言うことだ。
「なるほどね・・・その物資が、ここに来るまでのロックやトラップといった設備に使われ・・・この奥にもあるという事ね」
 現地で物資を調達し製造するほど、パイオニア1の製造工場は整っていない。むしろそれはパイオニア2の到来によって整うはずだったのだ。つまりは、パイオニア1にロックやトラップといった設備を1から製造する事は出来ないはず。そうなれば、ここまでの設備は全て12%の物資から作られたと考えるのが自然だ。
「・・・・・・つまり、政府はこの星に「何か」があることを確信していたという事?」
 何も考えずに、物資を運ぶほどパイオニア1に余裕があったとは思えない。
 一つの疑問が解決した瞬間に、より大きな疑問が浮上した。

 洞窟という閉鎖的な空間だからこそ、よもやこのような場所に存在するとは思わなかった。
 しかし、それは目の前に存在していた。一同は、それ・・・石柱に驚き足を止めた。
「まさか・・・ここにもあるとはね」
 目の前の石柱には見覚えがあった。地上で見た石柱と非常に類似していた。
「ということは・・・お、やっぱりあった」
 すぐ近くにメッセージパックが落ちていた。これまでのパターンを考え、ZER0はリコがどのタイミングでメッセージを残すかを把握し始めている。拾得物には非常に目敏い性格なのだ、元々。
「見て、このモニュメント!森にあったのと 同じ」
 やはり、リコも石柱の存在に驚いていたようだ。一人であったにもかかわらず、リコはメッセージパックの向こうにいる誰かと、その驚きを共有しているかのようだった。
「少なくとも、政府の説明はウソだったというのがこれで判る。あれは やはり 我々が建てたものじゃなかったのよ。やはり先文明があったってこと・・・?」
 先文明。正直、誰もがその可能性を考慮していなかった。リコの示唆により、はたと気が付くほどに。
「わからない・・・確実には何も」
 それはハンター達も同様だった。むしろ、先文明という考察項目が増えたことで、より謎は深まったと言える。
「この文字、解読できるかな。こんなことになると思ってなかったから、手持ちのツール、貧弱なのよね・・・」
「BAZZ、森の奴は解読できた?」
 リコのメッセージで思い出し、リーダーは記録担当に訪ねた。
「いや、まだだ。ツール以前にサンプルが乏しくてな。加えて言うなら・・・リコと違い、俺にとっては専門外でな・・・」
 リコは「赤い輪のリコ」のふたつ名を持つ優秀なハンターだ。と同時に、彼女は優秀な学者でもある。学者特有の好奇心がハンターへと導いたのか、ハンターで得られる知識が学者へと導いたのか・・・ともかく、彼女はどちらに置いても優秀であった。おそらくはツールのハンデを背負いながらも、この文字の解読に関してはBAZZよりリコの方が早く解読できるだろう。
「政府の学者連中がとっくに解読しているかもしらんが・・・7年前に建てたモニュメントだと主張し続けている以上、おそらく解読結果はトップシークレットだな」
 エネミーデータは、ハンター達に存在を知られた時点で、隠し立てが出来る物ではない。だからこそレオは素早く入手することが出来た。しかしこの石柱に関して言えば、リコであれ誰であれ、第三者が先文明の物ではと疑ったところで、政府はモニュメントだと主張し続けるだろう。真偽はともかく、政府にとってはモニュメントなのだ。解読結果というデータが存在することすら公表はしないだろう。
「先に進むしかないわね・・・BAZZ、記録だけはしっかりね。解読は、総督府経由を頼るしかないかなぁ・・・」
 総督府ならば協力的なはずだ。しかしそれもあまり期待できないかも知れない。なぜならば、総督府は総督の意志に反し、政府の介入がそこここで行われているからだ。仮に解読に着手し結果が出たとしても、何らかの邪魔が入る事も考えられる。
 しかしそれでも、あらゆる手であらゆる可能性を試してみなければならない。どちらにせよ、八方塞がりの状況にあまり変化はないのだから。
 自分にはまだ頼る仲間達がいる。リコはどうだろうか? ふと、ESはメッセージの主のことを不安に感じ始めた。
 リコは一人で何でもこなしてしまう。それがかえって、彼女を孤立させていった。ハンターとしても学者としても一流であった彼女は、誰からも尊敬され、誰からも妬まれた。その為、彼女に近づくことを懸念する人達が増えていったのは極自然な流れだったのかも知れない。
 それでも彼女は、困った人を見過ごせず、誰彼と無く手を差し伸べていった。しかし彼女は人に頼ろうとはしなかった。自分のことは二の次に考えてしまう彼女らしい性格だが、周囲の人々が懸念して近づかないため、彼女に手を差し伸べようとする人は極わずかだった。森へ調査に出向いた彼女は、おそらく誰にも相談することなく一人で解決するつもりだったのだろう。そして彼女は今、孤独なのだ。
 メッセージパックの先の誰かに訴えるように続けられるメッセージは、彼女が後に続く者たちへと残したメッセージ。と同時に、彼女の不安の現れでもあるのかも知れない。
 パイオニア1へ搭乗する時・・・リコはESに何も言わなかった。リコはESを巻き込みたくなかったのだろうが、ESにしてみれば、置き去りにされたも同然だった。そして後悔が募る。リコの心中を察してやれなかった自分に。そして察してやれれば、パイオニア1に同乗し、今孤独に耐えているリコの側にいてやれたかも知れない・・・そう思うと、胸が張り裂けそうだった。
 なにより・・・リコがまだ生きているのかが気がかりだった。もしや・・・そんな考えがいつも頭をよぎる。そしてもし・・・その結果を考える度に、自分が何故側にいてやれなかったのか、自己嫌悪に陥るばかりだった。
「ま、なんだ。こうなったらリコに直接聞いた方がいいな」
「え?」

 唐突なZER0の発言に、ESは一瞬戸惑った。
「だってそーだろ。おそらくリコが今回のことを一番理解している。当事者でもあるしな。ここまでメッセージパックを残しているしぶとさを考えれば、まだどっかで生きてるんだろうし」
 楽観的なZER0の発言は、非常に軽い発言であった。だが
「そうね・・・とっとと彼女を見つけて色々聞き出さないとね」
 ESはその軽はずみな言葉に救われた。どこか、彼女の生存を信じ切れていない自分がいたこと、そんな考えをしてしまう自分に嫌気がさすこともあった。しかし彼女の生存を信じる者が他にもいる。それが楽観的すぎる考えだとしても、それでも彼女の心を支えてくれた。
「先へ行くわよ」
 心のつかえを思わぬところでとれた彼女は、嬉々と歩を進めた。
「・・・・・・さすがは「軟派師」、ですわね」
 後方から後を追うZER0に、Mが声をかけた。
「さてね・・・俺は何も考えてねぇだけさ」
 照れくさそうに、指で頬をかきながら答えたZER0も、ES同様嬉々としていた。

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