ピクシー&カハク

「ねーねー、見てよこれ。いーでしょー」「あー、いーなーその服。アルケニーに作って貰ったの?」「うん。今年の流行色なんだって」「へー。私も作って貰おうかな」「もう出来てるみたいだよ。ほら、私達同じサイズだから一緒に作った方が楽なんだって」「そっかー。あとで取りにいこー。ところでアルケニーって言えば、最近ゴキゲンだよね?」「そうだね。何かあったのかなぁ」「あれじゃない? 前に作っていた服が良くできたとか」「えー、そんなんじゃないよぉ。きっと、恋よ恋」「恋?」「うん。恋する乙女ってやつ?」「恋かー。私もしてみたいなぁ」「すれば?」「カンタンに言わないでよぉ。恋ってそんなにカンタンなものじゃないしぃ」「それに私達だと、まず同じサイズの人を探さないとね」「そーねー。誰かいるかな?」「レプラホーン達は?」「えー、パス。あいつら靴作ってばっかで面白くないしー」「じゃあクルラホーンは?」「酔っぱらいなんてもっといやー」「じゃあじゃあ、ブラウニーは?」「いやよ、あんな毛むくじゃら。それにレプラホーンもクルラホーンもそうだけど、私達よりぜんっぜん大きいじゃない」「あっ、そっかー。なかなかいないもんだねぇ」「ねー。理想としては、やっぱ20cmくらいがいいかな」「うんうん、やっぱ身長は「ちょっと高め」がいいよねぇ」「そうだねー。もちろん色男に限るけどねぇ」「ねー。あーあ、どっかに良い男いないかなぁ」「そうだねー。あっ、いい男と言えばさー・・・」「あー、君達。おしゃべりに夢中なのは良いんだけどな・・・」俺は二人の会話へ強引に割り込み、一言苦言を呈する。「人の枕元でのおしゃべりはどうだろう? どうせなら違うところでやってくれ」普段からやかましいというのに、なにも人が寝ているところでやらんでも。「あっ、ゴメンねー。すぐどくから」「ねー、どこに行く?」「そうだねー、ああそうそう、台所にでも行こうか。なんか美味しいハチミツが手に入ったとかシルキーが言ってたし」「ハチミツ! いいわねー。でもあんまり食べると太るからなぁ」「大丈夫だよ。そうそう、なんか二口女がダイエットがどうとかこの前話してたね」「そーそー。やっぱりお菓子ばかり食べてるから太りやすいのかな?」「あー、いいから君達、とっとと移動してくれ」言っても無駄だろうなとは思いながら、俺は再度懇願する。むしろ、俺が寝床を変える方が早いのだろう。俺は枕を手に取り、まだやかましく喋り続けている二人を置いて部屋を出て行った。

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