novel

No.co10 モテる男の苦悩
with You're not the only hero(seed)

 この世には、二種類の人間が存在する。
 もてる奴と、もてない奴。
 などという三流小説のような書き出しもあるが、しかしこれは事実である。
(困ったな・・・)
 ここに、一人の「もてる側」に選ばれた男がいた。
 もてる要素の一つに、まず「容姿端麗」という物があるのだが、彼の場合まずこの要素が特化している。凛々しく整った顔立ちに、青く鋭い目。確かに女性からは「綺麗で格好いい」と評判になるのも頷ける。
 今回彼がここへとやって来る事になったのは、この容姿に関して悩むところがあった為である。もてない側の人間からすればなんと贅沢なと憤りを感じるところだが、もてる側としても、それ相応の悩みというのはあるものだ。
(適当な事をといっても・・・)
 ラグオルに降り立ってから、薄幸の美青年ジェットは何度目かの溜息を軽くつく。

 例えば、素敵な異性がいたとする。そんな異性に対して「より近づきたい」と願うならばどうするか? まずは「会話」から始めるのが最もポピュラーであろう。
 そしてその「会話」する「話題」。これが大切である。話題もなく会話をしろというのは難しく、また話題があれば会話しやすい。
「ねえ、ジェット君は何かお化粧とかしているの?」
 ジェットはラグオルに降りる数刻前、一人の女性に声を掛けられていた。ハンターズギルドに登録されたハンターのようだが、彼にとっては見覚えのない同僚だ。こうして声を掛けられることは彼にとって珍しい事ではないが、何度声を掛けられても、慣れるものではない。
 彼に「お近づきになりたい女性」の多くは、先ほどの話題を持ち出す事が多い。
 理由は当然、美しく整った彼の容姿が最も話題にしやすく、かつ無難な話題だと「思っている」からだ。
 しかし当の本人は、この質問が最も苦手なのである。
 この質問をされると、ジェットはただふるふると顔を横に振るだけ。つまり、何もしていない事をアピールして終わる。
 何もしていないのだから、答えようがない。この質問を苦手としている理由の「一つ目」はこれだ。
 そして二つ目は、会話そのものを不得手としているからだ。厳密に言えば、彼は会話が出来ない。訳あって言葉を発する事が出来ない為に。
「えーっ! でも何もして無くて、そんなに綺麗なわけないじゃなぁい」
 そして苦手な理由の三つ目は、この反応なのだ。
 女性は特に、美という物に敏感だ。自ら美しくなりたいと願うだけでなく、美しい物を追い求める傾向もあり、そして美しい物に対し嫉妬深い。
 下手をすると女性である自分より美しい彼が、美しさに磨きをかける事をしていないなど、信じられない。興味と自ら気付かぬ嫉妬で、多くの女性は「そんなはずはない」と疑うのだ。
「はいはい、もういいでしょ? それ以上まとわりつくと、迷惑なんだけど」
 そして対応に困ったジェットは、こうして唐突に現れたこの女性が無理矢理会話を終了させる事で救われている。
「げっ、「白獅子」ノア・・・」
 露骨に嫌な顔をする、まとわりついていた女性を、ノアと呼ばれた女性はギロリと睨みつけ、退散させる。もちろんあれこれと聞こえるような小声で文句を言いながら。
「まったく・・・なんなのよ。ジェットもジェットで、いちいちああいうのにかまってないの!」
 まるで保護者のように・・・いや、昔から保護者同然にジェットの面倒を見てきたノアが小言を言う。
 もちろん、保護者面しているからという理由だけでかまっているわけではない。
 ジェットの側に女性がいるだけで、わけもなく腹立たしい。人はそれを嫉妬という。
『何もしていないと言っても、納得してくれなくてな』
 話せない変わりに、ジェットはメールで言葉を伝える。
 受信したメールを読み、何とも情けのない返答に呆れるノア。
「だったら、適当な事言って誤魔化せばいいでしょ、嘘でも良いから。まったくもお・・・」
 適当な嘘。
 その「適当な嘘」を付くにしても、彼は不器用だった。あまり感情を表に出さないだけに、人付き合いが不得手。それ故人付き合いが不器用なのだ。それはノアにも判っていた事なのだが、まさか「適当な嘘」の為にここまで手の込んだ事をするものか? 後にノアはまた呆れる事になる。

「クラゲの採取・・・ねぇ・・・」
 洞窟の第二階層。ここは謎の多いエリアだ。
 そもそも、洞窟の構造としては、地中深く潜れば潜るほど、生命が存在しにくい環境へとなっていくものだ。ましてマグマが溢れる第一階層よりも下の階層が、水源豊かで動植物が育成しているなど考えにくい。
 上層部にあるマグマが熱源になる事で、ほどよい環境を生み出しているのではないか? それが専門家の仮説らしいが、それでもやはりとても信じがたい環境だ。
 まあ百歩譲って、この特殊環境を受け入れたとしよう。それでも、ここにはまだ信じられない光景を目の当たりにする事が出来る。
「珍しいクラゲですからね。ラグオルの生態系の調査と共に、学者の皆さんには良い研究材料になるようです」
 プカプカと辺りに浮かぶクラゲを、Mは捕獲機で採取しながらESにクラゲ採取の理由を語る。
 そう、ここではクラゲが空に浮かんでいるのだ。このような驚くべき光景が、ここラグオルにはいくつも存在する。
 大気中の湿度が異常に高い事になんらかの形で関係しているのではないかというのが、今のところの仮説だ。それを解明する為、またラグオルの生態系や自然環境、果ては食糧事情に至るまで、このクラゲを調べる事で見えてくるのではないだろうか。そんな観点から、ラグオルへ自由に降りられない学者達に代わり、ESとMがクラゲの採取に訪れていた。
「モーム博士もさぁ、何も私らに頼む事もないでしょうに・・・」
 元々仕事をえり好みする癖があるESにしてみれば、この手の仕事は普段なら請け負わない。しかし依頼者が世話になっている博士である事と、Mの「気になる事があるので調べたい」という野暮用を兼ねてラグオル降下を決めたのだった。
 その「気になる事」というのは、Mにしては意外な、しかしよくよく考えればMらしい事なのだが・・・。
「とりあえずこの辺りのサンプルを採取したら、次に行くわよ」
 Mが「気になっている」物をひとすくいし試験管に入れ、それをケースに仕舞い込む。
「はい。では参りましょうか」
 二人揃って歩き出した、まさにその時だった。
 Ka−Booom!
 大きな爆発音が二人の耳に届いた。
 そしてすぐさま、二人は目だけで互いの意思を確認すると走り出した。
 二人の予想通り、音の正体はテクニックによるものだった。証拠に、駆けつけた先には一人のハンターが、それもテクニックを主に用いるフォースの格好をした青年が敵に囲まれていたのだから。
「加勢するよ!」
「テクニックに集中なさってください。ESさん、私も「死神」として前線に立ちます」

 突如として現れた二人の見知らぬ同僚に、青年は驚いたのか、声を出すことなくただうなずくだけだった。
 青年は別に、ピンチに立たされていたわけではない。
 確かに敵に囲まれてはいたが、一人で対処出来る程度の、さして難しい局面ではなかった。
 しかしありがたい事に変わりはない。それに、もし自分が彼女達と同じ立場だったらどうしただろうか?
「加勢も必要ないと思ったけどね。まあ見てるだけってのは性に合わないし」
 あっさりと敵を全て打ち倒したところで、ESは青年にこう話しかけた。
 自分が同じ立場であれば、やはり加勢しただろう。知らぬ同僚とはいえ、敵に囲まれているところを素通りなど出来るはずもない。
「あんたも依頼か何か? こっちは仕事に張りが無くてやんなっちゃってるんだけどねぇ」
 ハンターズは横の繋がりがしっかりしている。故に見ず知らずの相手でも、気軽に声を掛け合うのはごく当たり前に行われている。
 しかし、目の前の青年は少しばかり声を掛けられた事に戸惑っているようだ。
 戸惑ってはいるが、こういった状況に「妙な慣れ」でもあるのだろうか? 落ち着き、しかしESに返答する事もなく、なにやらごそごそと始めている。
 その様子が手慣れている為、ESもMも、青年を失礼な奴だとは感じなかったが、やはり何がしたいのかその意図がわからず小首をかしげる。
 すると唐突に、二人の元に「ギルドカード」がBEEを通じて渡された。このギルドカードはいわば名刺のような物であり、ギルドの登録ナンバーや自己紹介などを伝えるだけでなく、BEEを通じてメールのやりとりなどを行う際の「電話番号」のような役割も担っている。
 青年が送ったギルドカードには、こう記されていた。「申し訳ないが、ギルドカードを頂けないだろうか?」と。
 ギルドカードは、個人情報をまとめたものだ。つまりは安易に渡すべき物ではない。さて、そんなカードを相手に渡すべきだろうか?
 普通は躊躇して当たり前だ。だがESとMは気にすることなく、カードを相手に渡した。
 まず自分からカードを渡してきた事。そして手慣れた態度。事情はわからないがこういった事に慣れている彼の様子を見て、特に怪しいとは思わなかったのが渡した理由だ。もっとも、カードを先に渡しておいてからナンパに入るという手口もあるが、そんな見え透いた行為をする奴は、彼女達の知る限り一人しか該当者がいない。
『すまない。自分は事情あって口がきけぬもので。突然の無礼許して貰いたい。そして先ほどの件、加勢して頂き感謝している。ありがとう』
 カードを渡したところで、二人にメールが届いた。どうやら彼はメールを口とし会話をしているようだ。なるほど、だから手慣れていたのだと二人は納得した。性格なのか、それともメールという形式だからなのか。少しばかり硬い文面で、青年は礼を述べてきた。
『私はジェット。ここに来たのは特に目的があった訳ではないのだが・・・まあ気晴らしの様なものだ』
 ラグオルという危険地帯を「気晴らし」という理由だけで訪れるには、それ相応の「腕」が必要だろう。やはり先ほどの助っ人も、彼には必要ないものだったようだ。
 多少「気晴らし」の原因については気になるところだが、人のプライベートに踏み込むのは失礼だろう。二人はその点に関しては無関心を装った。
「なるほど。私達はラボに頼まれて研究材料の採取。それと「水くみ」ね」
 パイオニア2は移民船だが、船だけで一通りの生活が営めるだけの設備が整っている。そんな生活の中で欠かせない物の一つに「水」があるが、この水に関しても当然、しっかりと設備が整っている。つまり飲み水にしてもその他生活水に関しても、わざわざ「水くみ」をしてまで持ち込む必要はないはずだ。口にはしないものの・・・元々「口」に出来ないのだが・・・ジェットはその事が少しばかり気になった。
「ちょっと気になる事がありまして・・・別に何か問題があるとか、そういう事ではありませんから」
 口には出さずとも、顔には出る物だ。ほんの少しだけジェット怪訝そうな表情を見せた、そのわずかな変化をMは読み取り、説明を補足した。
 捕捉はしたが、ハッキリとは伝えない。「気になる事」というのが、Mには少しだけ恥ずかしかったから。
「化粧水にならないかって、それを調べたいのよ」
 曖昧なままでは、相手を余計に混乱させてしまう。ESはMに代わって水の用途を告げた。Mは少し俯き、ほんのわずか頬を赤く染めた。
 女性として、化粧水を使う事はけして恥ずかしいことではない。むしろ大人の女性であれば誰もが普通に使うだろう。
「ここは非常に水源が豊富なうえ、洞窟内だというのにこれだけの動植物が育つ珍しい環境にありますから・・・なにか生命を活性化させる成分が含まれていると思いまして・・・でしたらその・・・この水だけで効果のある化粧水にならないかと・・・」
 Mの科学的推理は素晴らしいものがある。ただ、その応用例としてまず先に化粧水を思いついたことが恥ずかしいのだ。何故恥ずかしいのかなど、ここまで説明しなければ判らないのだから、むしろ堂々としていれば誰にも咎められやしないだろう。だが羞恥心というのは、例えそれが相手に悟られなかったとしても頬を勝手に赤くしてしまうものなのだ。
 Mも年頃の女性である。故に化粧の一つもするだろう。ただ見たところ、基礎化粧だけの、肌の手入れ程度の簡単なものだけのように見て取れるが、それでもやはり化粧というものに興味があって当然。常に美しくありたいと願う女性の心理を、ジェットは「別の意味で」思い知っているだけに、恥じらうMが微笑ましい。むしろ自分に言い寄る女性達も、彼女のような奥ゆかしさを持って欲しい。などと勝手なことを考える自分に少し苦笑する。
 ふと、ジェットは自分がここに来たいきさつ・・・自分の悩みを思い出し、目の前の美しい女性達に尋ねた。自分がここへ「気晴らし」にやってきた経緯を説明しながら。
『失礼ですが、その話もう少し詳しく教えて貰えないだろうか?』

「さすがね・・・Mさんの言うとおり、化粧水としての効果はありそうよ」
 持ち帰ったクラゲをモームの研究室へ収めた三人は、そのまま別の、アリシアの研究室を訪れていた。
「専門外だから具体的な事までは何とも言えないけど・・・ようするに、温泉と同じね。第一階層にあるマグマの熱で溶け出した成分が水に含まれ、それが第二階層で湧き出ているみたい。肌に塗ったり、それこそ温泉のように全身を浸すと、色々と効果がありそうだわ」
 成分の解析データを一同に見せながら、アリシアは語った。正直そのデータに書かれている意味はさっぱりわからないのだが、アリシアが説明している通りなのだろうと納得していた。
「興味深いわね。確かに洞窟の動植物の生態系を調べるにはこの水にも着目するべきかもしれないわ。後でモーム博士と打ち合わせてみないと」
 アリシアも女性である。化粧水として効能があるこの湧き水に化粧水としての興味もある。だが、その前にアリシアは科学者なのだ。場合によっては自分が研究している分野にもなんらかの影響があるかもしれないこの水のデータに、科学者らしい興奮を抑えきれない。
「なるほど・・・良かったわね、二人とも」
 ESは二人のフォースに微笑んだ。Mは自分の推理が正しかったことと、新しい化粧水を手に入れることが出来喜んでいる。そしてジェットもまた、「別の用途」でこの水が使えることにやはり喜んでいた。
『ありがとう。これで「言い訳」を考えずにすみそうだ』
 ジェットの悩みは、これで解決出来るだろう。
 「何か化粧をしているのか?」という問いかけに対し、「化粧水を使っている」と答えれば、当然「どの化粧水を使っている?」という質問が返ってくるだろう。適当に誤魔化すにしても、ジェットは使いもしない化粧水の知識など有りはしない。どうにか知っている銘柄を並べるだけでは、すぐにボロが出るだろう。だから彼には「もっともらしい嘘」を付く為に、手の込んだ「知識」が必要だったのだ。
 ただ問題なのは、化粧水の知識を何処から手に入れるか、である。彼はあまり人付き合いが得意ではなく、仲の良い異性は極限られている。特に最も仲がよい異性は、あまり化粧に関して詳しくはない。それはその異性がまだ若いというのも一つあるが、性格的な所もある。その為ジェットは情報収集という段階で詰まっていたのだ。
 そんな時に現れたのが、M達だった。渡りに船とはまさにこの事。
「しかし大変だね、美男子っていうのもさ。こういう悩みは「アレ」には縁遠そうだなぁ」
 ESが言う「アレ」というのが誰なのか、ジェットには想像も出来ないが、少なくとも自分と同じ悩みを持つ者はそういないだろうという自覚はあった。
 余談だが、後にハンター達が、特に女性ハンター達がこぞって洞窟の第二階層へと降りていったのは言うまでもなく、その情報源が一人の美男子だというのも言うまでもない。

 さて、本来ならここで物語は幕を下ろす。
 だがもうしばらくお付き合い願えるだろうか?
 無事悩みも解消し、三人がアリシアの研究室を後にした直後の話。このエピソードに少しばかり興味がある方はこのまま読み進めて頂きたい。
「ジェッ・・・誰? その人達」
 三人がそれぞれの目的を為し得、笑顔で談笑しながら歩いているところに、一人の女性が声を掛けてきた。
 ノアである。
 ジェットはすぐにES達を紹介しようと、BEEでメールを打ち始めた。しかし、それよりも早く、ESが口を開いた。
「ジェットくぅ〜ん。今日は楽しかったわぁ〜」
 普段なら絶対にあり得ない、甘えるような猫なで声でジェットに話しかけながら、腕を相手の首にかけながら寄り添う。
 その行為に、当のジェットは戸惑い、メールを打ち手を止めてしまう。そして女性に免疫のない彼は、火が出る勢いで顔を赤らめる。
 そしてそれを見せつけられたノアは、火が出る勢いで顔を赤らめる。もちろんジェットとは別の意味で。
「ちょっ、ジェット! どういう意味よ!」
 とうもこうも、質問されたジェットにも、何の事やら判るわけがない。確かに「楽しかった」と言えばそうかもしれないが、突然態度を変えたESの意図などわかるはずもない。
 言い訳しようと再びメールを打とうと手を伸ばす。そしてまた、それよりも早くESが口を開く。
「どういう意味って、ねぇ? ジェットくぅ〜ん。あーんな事やこーんな事まで・・・うふふ、楽しかったわよねぇ〜」
 火に油を注ぐとはよく言ったもので、みるみるとノアの顔は先ほどより真っ赤になっていく。
 からかっているのだ、ESは。
 最初にノアが声を掛けてきた時、彼女が何物かは知らないものの、ジェットの知り合いだというのはすぐに判った。そしてあまり感情を表に出さない美青年が柔らかい笑顔を浮かべた。そして声を掛けた女性はすぐに自分への、あからさまに嫉妬の混じった質問をぶつけてきた。
 となれば、二人の関係は「親密な」ものだとすぐさま推理出来る。
 そこまで判った上で、ESはからかうことを決めたのだ。
 いつものことながらと思いつつも、MはESの「お茶目」に、溜息をつく。
「・・・とにかく、その腕を退けなさいよ。わざとらしく胸を押しつけたりして・・・下品な奴ね」
 どうにか落ち着きを取り戻そうと、ノアはESに向かって要求をした。睨みつけ、出来る限り侮辱を交えながら。
「・・・ふっ」
 だが冷静にはなりきれていない。下品な奴と侮辱したつもりが、逆に自分の言葉をきっかけに侮辱されてしまったのだから。
「どっ、どこを見て笑った今!」
 怒りと羞恥でまた顔を赤らめ、白獅子は吠えた。胸元を手で押さえながら。
 さすがにここまで来るとそろそろ収拾がつかなくなる。Mはここらで終わりにさせようと声を掛けようとした。その時・・・。
「いやね、そりゃ胸ってのはあるに越したことはねぇけどな。しかし無いなら無いで、こう、グッ・・・と来るものもあるんよ。いや、むしろ無いが故の魅力ってのは確実にあるね! というわけで、これからそれを検証する為にも三人でホ・・・」
 Bap!
 一人は手慣れた感じで、一人はこれまでに貯まっていた怒りを爆発されるかのように、唐突に現れなれなれしく肩に手をやる「軟派師」に制裁を加えた。
「本当に・・・相変わらず良いタイミングでいらっしゃいますね」
 呆れながらも感謝しつつ、Mは苦笑しながら吹っ飛ばされた軟派師をねぎらった。
(・・・騒がしい人達だ)
 人付き合いになれていないジェットも、さすがにこの人達は少しばかり常識的なところから逸脱しているのは判る。そんな彼らを、ジェットは呆れ半分、そして憧れ半分に見つめていた。

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