【解説】
 スコットランド(イギリス)北東のオークニー諸島や北のシェットランド諸島で語り継がれている妖精の一族。スコットランド高知地方では「ローン」と呼ばれている(本によっては別々に紹介されていますが、非常に似ている妖精なので同一の種族と思われます)。アザラシの皮をかぶり海の中にある自分達の待ちで生活をしています。皮を被っているときは見た目では本物のアザラシと全く区別が付きませんが、アザラシ達の中では不細工な方なのだそうです。しかしひとたび皮を脱げば、男も女も非常に美しい人間の姿になると言われています。
 男女ともに同族の配偶者がいる場合が多いのですが、男のセルキーは人間の女性を誘惑し交わる事が多い。しかしその後のことには無頓着で、たとえ女性が身ごもっても父親だと名乗り出ることはありません(というか、一夜限りと割り切るタイプ)。その為、セルキーが伝えられている地方では、父親も無しに身ごもるのはセルキーの仕業とされました(ちょうどインキュバスの役割に似ています)。
 女のセルキーは男とは全く逆で貞操を守ります。しかし時折、滑らかな砂浜で皮を脱ぎ躍るのが好きなシルキーが、脱いだ皮を人間の男に奪われ、求婚を求められるという話もあります。この場合女性のセルキーは求めに応じ結婚し、良妻賢母ぶりを発揮すると伝えられています。しかし隠された皮を見つけた途端、セルキーは本来の夫が待つ海へと帰ってしまいます。ようするに、日本で言う「羽衣伝説」に非常に似た話が伝えられているのです(余談ですが、この手の話は世界中で見受けられます。たとえば同じ水に住む妖精「メロウ」でも赤い三角帽を奪われるという形でほとんど同じ話が伝えられています)。
 セルキーはアザラシの姿をしている以上、アザラシを狩り生計を立てている人間に傷つけられたり殺されたりするのは仕方ないと、かなり寛容な考えを持つ優しい種族です。「ローン」の方で語られている話では、傷つけられたローンの息子が知らずに傷つけた猟師の下に出向き、父を助けてくれとローン達の国まで連れて行くという話があります。この時傷を治した上もう二度とアザラシは狩らないと約束をした猟師に、ローンは彼の今後の人生で「アザラシを狩らないことで生じる損失」分よりちょっと多めの金貨を渡した、と言われています。
 アザラシの姿の時は、普通のアザラシではなく人間大の大型アザラシの姿になると言われています。

【設定】
 学生時代、後楽園ゆうえんち(現東京ドームシティアトラクションズ)のヒーローショーの舞台でバイトをしていたことがありました。と言っても、もちろん「中の人」をやっていたわけではなく(JACの人がやる本格的なショーですからね)お客の整理とか舞台の清掃とかですが。そのバイトのおかげで、かなり間近でヒーローショーを見ることが出来たので、かなり面白いバイトでした。その時に色々と知ったことも多く、「中の人は大変だ」というのを目の当たりにしてきました。そういう経験があるので、セルキーで苦労話とか面白そうかなぁと書いてみました。
 セルキーは男女ともにいるので、男でも良かったのですが、なんとなく「楽屋で愚痴る芸人」という姿が、ピン芸人の「友近」女史のイメージが浮かんだので女性、それも「姐さん」系の熟練芸人っぽい感じにしてしまいました。なんというか、こういうのを本物の友近さんもネタでやってそうかな、って感じで。イメージとしてはタバコを吹かしながら・・・というイメージもあったのですが、妖精なのでタバコはNGにしました。
 今回の話は、珍しく「館の外」の話になりましたね。セルキーの方から尋ねてきて芸について相談する、というのも最初考えたのですが、最後のシーンでアザラシになって部屋を出て行くのが書きたくて主人公の方から尋ねていく形にしました。

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