【解説】
 ギリシャ神話に登場する、上半身は美しい女性だが下半身は蛇という怪物。諸説色々あるのだが、主に単独で遭遇するケースが多いものの、群れを成して現れることもある。住処は砂漠のオアシスや洞窟、あるいは人里離れた森やジャングルとされている。
 元々はリビアの女王だったという説があり、この場合彼女はゼウスとの間に何人かの子供を授かることになるのだが、ゼウスの妻ヘラの嫉妬により子供達は全員殺されてしまいます(この時、一人だけ娘が生き残り、後のスキュラになったという説もあります)。ラミアはこの惨劇に気が狂い、その復讐心を他人の子供を惨殺することで晴らした。そして徐々にその狂気が彼女の姿を怪物へと変えていき、若い男達と一夜を共にし生き血を啜る吸血鬼(エムプーサ)になったとされています。
 また同じギリシャ神話では、かの英雄ヘラクレスの話に登場しています。ヘラクレスが掴まえたゲリュオンの牛を逃がしてしまった際、それを追って砂漠まで来たところでラミアと出会います。ラミアはヘラクレスに、自分の情夫(愛人)になれば牛を返すと交渉を始めます。これを了解したヘラクレスとラミアとの間には三人の子供が授けられ、そのうち三番目の子供スキュティスは後のスキタイ族の子孫になったとされています。
 このように諸説色々あるラミアですが、元々はリビアにおける愛と戦いの女神であり、アテナと起源は同一だとされています。そのラミアが怪物になったのは、神話が作られた時の時代背景にあると思われます。つまり元々女神だったラミアを信仰していた民が攻め込まれ、ギリシャ神話に取り入れられた時に怪物にされた、というものです。ゼウスの愛人だったのはそのあたりの名残と思われます。
 そもそもラミアは「貪欲な」という意味の言葉「ラミュロス」を語源にされているとも言われていますし、正体は悪霊だとか、目を自由に外せるとか、幅広く諸説伝わっています。そもそもギリシャ神話だけを見ればラミアは一人しかいないはずですが、上記にある通り時として「群れ」をなす、つまり複数同時に現れることもあります。これは筆者の推測ですが、元々各地方にあった吸血鬼系の、特に女性吸血鬼の伝説が「ラミア」という形でまとまっていった故に色々説があるのでは、と考えています。聞き分けのない子供をラミアの名前を出して脅し躾るという話もありますので、このあたりでまた話が色々と膨らんだ可能性もあるでしょう。
 とりあえずどの伝承でも、ラミアは「美しい女性」「男を誘惑する」「下半身が蛇」「血を吸う」の4点は共通しているようです。

【設定】
 筆者は「ソードワールド」が好きなのですが、このTRPGのシナリオ集第2冊目「ユニコーンの探索」の中に、「神官戦士が六人!」というシナリオが収録されています。このシナリオに、人妻ラミアが登場するのですが、俺はこのラミアの印象がとても深く、こうして新妻ラミアを書いてみたくなったわけです。なのでアイデア自体はかなり前から練っていたのですが、なにせ決まっているのが「奥さまはラミア」という一点だけですから、なかなか執筆にまで至りませんでした。そして今回の話を思いついたときも、さてこれを書いて良いか悩みました。だってさ、思いっきり筆者の趣味が出てるやん(笑)。そこを知られるのもなぁ・・・と思いはしましたが、よく考えれば、ここまで(このシリーズを順序よく)読んでいれば、筆者の性癖はバレバレだもんね(笑)。そう思って書いてみました。
 玄関開けたら、ネコミミ付けてメイド服を着たラミア妻。もうね、この旦那さん羨ましすぎですよ(笑)。

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