ホブゴブリン&ブラウニー

【解説】
 どちらもアイルランドやイギリスに伝わる「家憑き妖精」の代表的な妖精で、特徴もよく似ています。家事をよく手伝う小人の妖精で、コップ一杯のミルクをそっと置いておくのさえ毎晩忘れなければ、何時までも手伝ってくれる親切な妖精なのですが、ミルクを置くのを忘れたり、また労いのつもりで服を置いておいたりすると、二度と現れなくなると言われています(服を与えると、それを他の妖精に自慢しに出かけてしまい戻ってこられなくなるそうです)。また妖精なのでイタズラ好きでもありますが、致命傷になるようなイタズラまではしないとされています。
 この二人の違いは姿で、ブラウニーは人の姿、ホブゴブリンは下半身が羊で上半身が人間の姿をしているとされています。またこの違いから、他の家憑き妖精を、背丈や老若男女問わず人の姿であれば「ブラウニーの一種」とされ、人ではない部位を持っている場合は「ホブゴブリンの一種」と区別されています。例えば同じ家憑き妖精のシルキーは「ブラウニーの一種」ということになります。
 ホブゴブリンは近年のゲームなどでは「悪鬼ゴブリンの親玉的なモンスター」とされている事が多いのですが、本来は上記に書かれた通り、善良な妖精です。しかしイギリスやアイルランドにキリスト教が広まるにつれ、妖精はすべて悪魔の一種だとされ始めてから変わっていき、「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」の筆者、JRRトールキンが書いた「ホビットの冒険」にて、ホブゴブリンがゴブリンと名前が似ている事もあって「ゴブリンの親玉」として登場してから、こちらのイメージが一般に定着していきました(余談ですが、「(ハイ)エルフの容姿」や「エルフとドワーフは仲が悪い」といった設定も、JRRトールキンの「指輪物語」から定着しています)。
 ブラウニーは「茶色い(ブラウン)人」という意味で、その名の通り全身茶色でくしゃくしゃの髪をしており、裸同然かボロボロの茶色い服を着ているとされています。
 ホブゴブリンやブラウニーの話は、アイルランド,イギリス全土に様々語られていますが、悪戯が過ぎる彼らの話も多く、その場合は「ボガード」など他の名称で呼ばれる事もあります。

【設定】
 まずは「ホブゴブリン」は悪いモンスターではないんだ、というのを書きたかったところから、つまり「解説を書く為に話を考えた」という経緯があって、この話は思いつきました。なので二人の妖精らしい話と言うよりは、代表的な妖精がちょこまかと館で働いている姿がなんとなく思い浮かべて貰えればいいかなぁ、って感じに仕上げました。なので話の「オチ」をどうしようかなぁなんて考えていたら・・・うむ、まあアレはアレで(笑)。
 二人とも「小人」と書きましたが、大きさは「椅子によじ登れる程度」つまり子供と同じ程度だと、文だけでイメージして貰えれば幸いでしたが、ちょっとあの文だと解りづらかったかなぁ。今回の話に限らず、容姿の説明をどこにどの程度まで盛り込むかを考えるのが一番難しいですね。ホブゴブリンの下半身にしたって「蹄」しか書いてないし、なにより、どっちがどっちだか本文だけじゃ解らないしね。なので、最近では「とりあえず解らないまま読んでも楽しめて、後から解説を読んで解って貰えればいいかな」って感じで書くようにしています。なにせこの話でもう44話も書いているので、どんどん登場する者達がマニアックになるから容姿説明がより大変だしね(笑)。
 口調は二人とも一緒に、「一人称は僕」「考えは子供っぽいけど、口調はちょっと古めかしい」という感じにしてみました。なのでお互いを「相棒」と呼び合うようにしてみたのですが、なんかこの「相棒」というのがあって、余計にこのコンビが書いていくうちに気に入ってきてました。何かの機会で、またこのコンビは書きたいなぁ。

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