ゲリュオン

【解説】
 ギリシャ神話「ヘラクレスの12功業」の10番目となる功業「怪物ゲリュオン(ゲリュオネス)の飼い牛の生け捕り」に登場する怪物。腹の部分で繋がれた三人の男という姿をしているため、「ゲリュオネス」という複数形で呼ばれる事も多い。
 エリュテイアという西の果てにある島に住み、赤い牛を複数飼っている。彼は牛飼いのエウリュティオンと番犬オルトロスと共に暮らしていたが、功業の為に訪れたヘラクレスにエウリュティオンとオルトロスを殺された上に牛を強奪される。追いかけたゲリュオンはヘラクレスが放った矢によって射殺されてしまう。
 ゲリュオンの下にはエウリュティオンとオルトロスの他に、もう一人怪物がいたという説もある。この怪物は名前の表記がなかったり、あるいは「エキドナ」だと言われている場合がある。エキドナといえばオルトロスの母親にして、数多の怪物を生み出した有名な怪物だが、そのエキドナとは同名なだけで別の怪物だと思われる(姿も同じようだが)。余談だが、オルトロスは「エキドナ」との間にスフィンクスなどの子を儲けているが、この「エキドナ」が母親なのか同僚(?)なのかは定かではない。
 ゲリュオンの父親はクリュサオルという、数多の蛇の集合体のような怪物なのだが、このクリュサオルはペルセウスによって首を切られたメデューサの、その首からしたたり落ちた血より産まれた怪物。つまりゲリュオンはメデューサの孫に当たる存在なのである(ちなみに、同じくメデューサの血から産まれたペガサスは、ゲリュオンにとっては叔父になる)。

【設定】
 ギリシャ神話に限らないけど、「怪物なら殺されて当然」的な流れで、何もしていないのにヘラクレスに殺されて飼い牛を強奪されるんだからかわいそうだよなぁ。そして強奪したヘラクレスは英雄扱いだもん。なんかこーいう、釈然としない話は神話なんかにはやたら多いんだけど、だからこそ、ゲリュオンみたいな奴らを「味方」というか「友」として活躍させたい、というのが「空蝉」のコンセプトの一つになってますね。
 とまぁ、登場はさせたけど、正直ヘラクレスの功業の中では道中の方が大きく取り上げられていて、ゲリュオン自身はあまり触れられていないので書く事が少ない(汗)。空蝉の中では、「牛」に関わる食糧支援をしてくれるありがたい存在になってますが、名前だけなのはあまりにもなので、前回の「セエレ」に繋げて登場させてみました。もうちょっと、「キャラ」として確立させたい部分も多いけど、とりあえずはこんなところかな。
 余談ですが、ゲリュオンが飼っている牛は主に「ジャージー牛」です。これはヘラクレスの話の中で「赤い牛」と表記されているので、赤毛と言えばジャージー牛しか思い浮かばなかったのでこれにしました。ジャージー牛はイギリス発祥の牛なのですが、まぁギリシャで飼われているかどうかはこの際考えないのが吉(笑)。あと、ジャージー牛は乳牛としても食牛としても飼われる牛なので、ある意味設定的に便利だからというのもあるね(笑)。

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