スキュラ

【解説】
 ギリシャ神話に登場する怪物。元は美しい水のニンフ(精霊)であった。あまりの美しさに、海神グラウコスに愛されたのだが、グラウコスは緑色の肌を持ち巨体であったために、スキュラはグラウコスが声をかけようと近づくと逃げ出してしまっていた。悩んだグラウコスは魔女キルケーに相談を持ちかけるのだが、このキルケー、実はグラウコスに惚れていた為、スキュラに嫉妬してしまう。嫉妬したキルケーはスキュラがよく水浴びをしている海辺(泉という説もある)に毒薬を流し込む。気付かないスキュラがいつものように水浴びしていると、毒薬の呪いによって下半身だけが化け物に姿を変えてしまった。驚いたスキュラは気が動転し、海岸の絶壁にある洞窟の奥へと身を隠してしまった。化け物となったスキュラは、その洞窟から出る事はなかったのだが、自分の意志とは無関係に、下半身の化け物は近くを通る船などを襲っていった。
 上記の説は一例で、「海に落ち岩となった」という説と「海に落ち怪物として(海で)船を襲うようになった」という説もある。
 また下半身の「化け物」だが、「六つの犬の頭と十二本の脚」という説と「六つの蛇の頭と十二本の脚」という説。他に「タコの脚」や「様々な動物が合わさった異形」など色々ある。
 これは筆者の推測だが、おそらく最初は「犬」だったのだが、「洞窟から勝手に動き船を襲う=頭と脚だけが伸びて洞窟の外へと向かう」という所から犬の頭からよりイメージしやすい蛇の頭の方へと伝承がシフトしていき、「蛇」と「脚」という一致しない部分と「海の中から襲う」という伝承が相まって「タコの脚」へと変わったのではないか・・・と考えている。
 怪物になる前にスキュラ自身にも様々な説があり、彼女の両親についても言い寄った神についても多説様々ある。また多くの怪物を生み出しオルトロスやケルベロスを生んだ事でも知られている「エキドナとテュポーン」が両親だという説もあり、この場合は生まれた時から怪物だった事になる。
 神話の中にも登場するが、「スキュラ(岩)」という場所は実在する。イタリア南西シシリア沿岸のメッシーナ海峡に洞窟と岩があり、それぞれがスキュラがすんでいる洞窟,スキュラが姿を変えた岩とされている。ここは航海の難所であり、また岩と反対側の海域には「カリュブディス」という渦潮の地帯があり、この間を通る事自体かなり危険だとされた。実際「スキュラとカリュブディスの間」という意味の英語は「進退きわまる」という意味のことわざになっている。またカリュブディスも「一日三度海を飲み込み吐き出す怪物」の名前になっており、渦はこの怪物が海水を飲み吐き出す事で生じるとされている。この海域の話は「アルゴ探検隊」などのギリシャ神話にも登場している。

【設定】
 何時かは書いてみたいなと思っていたのですが、実は「下半身」についてどちらにイメージを統一するかで悩んでいました。結果としては、蛇の方とタコの方を複合して採用にしました。で、代わりに犬については「性格が犬のように人なつっこい」って方に採用(笑)。自分の中では上記にも書いた通り最初は犬だと思っているので犬の方が良いかなとも思っていたのですが、多くの人のイメージがタコ足なんだろうなぁということで、まずタコ足を決定して、「タコと犬」よりは「タコと蛇」かなと思い、蛇に決定。
 ゲームなどでは中ボスだったりと強敵として登場する事が多いですよね。場合によっては「上半身は美しい女性」という設定すら無視されてたり。あの「真・女神転生」シリーズですら、「鬼女」だった事もありましたがほとんどが「妖獣」扱いで、会話では仲魔になってくれない扱い。スキュラの物語を考えるとこれはあんまりだよなぁ・・・って思うところもあって、とにかく「可愛らしい女性」にしようと務めました。
 ちなみに、この話を本格的に書くきっかけになったのは、拍手よりリクエストを頂いた事。初のリクエストでした。リクエストを下さった方がどなたかは解りませんがなんとなく・・・どこから流れ着いたのかの予測は立っています。その予測を考えて、メイド服を着せてみました(笑)。ええ、筆者の趣味も当然ありますが、あそこの人達へのサービスも含めてね。同好の士達に感謝。
 もう一つ余談。筆者、何故か「スキュラ」と聞くと真っ先に思い出すのが「聖闘士星矢」のポセイドン編に登場した「スキュラのイオ」なんですよ(笑)。

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