ライラ

【解説】
 ユダヤ教に伝わる天使で、「夜の天使」と言われている。懐妊,妊娠を司る天使。
 女性が懐妊すると、女性の子宮より精子を取り出し、それを神の元へと届ける。届けられた精子は神の元で性別や美醜から貧富に至るまで人生の全てを定められる。そしてしばし天界で魂に昇華するまで育ち、母親の胎内へと戻される。
 この直前まで子の魂は自分に定められた運命の全てを把握しているのだが、母親の胎内に戻される時に、ライラは子の鼻を軽く弾く。すると記憶の一切が忘れ去られる為、人々は自分の運命を知らずに生きていく事になると言う。余談だが、「デジャブ」はこのライラが消したはずの記憶が残っていた物で、それを瞬間的に思い出した結果なのだという事にもなっている。
 捕捉だが、「ユダヤ教」は聖典を同じにする「キリスト教」と同一視される事がしばしあるが、唯一神がいる事など聖典が同じだけに似ているところが多いが、基本的に別の宗教です。よってライラはキリスト教には登場していない(むろん、近い立場の天使はいる)。

【設定】
 今回の話は、筆者の知人が実際に懐妊したのをきっかけに思いつきました。主人公と同じように何かしなきゃと右往左往した事もネタになってますね(笑)。まあ、結局主人公と同じで「おめでとう」を言うだけに留めるのが一番なんだろうなぁ。せめてこの話が「お祝い」になればいいなぁと思ったり。
 基本的に、俺はあまり「天使」を書く事は少ないです。それは「唯一神」という、唯一絶対の存在だけを認め動く天使達と、色んな神や悪魔と仲良くしていきたいと考える筆者および主人公の考えがそぐわないからなんですが・・・そこを逆手にとって、今回の話をまとめてみました。ライラはその観点から言えば、主人公との仲は良くないはずですが、多くの人々にふれあう機会が多いライラなら、主人公と接点があっても良いかなぁと思ってます。
 ところで、ライラが子の魂を戻す時に記憶を消すという話・・・なにも消すくらいなら教えるなよと思うんだよね俺(笑)。まあ、運命を定める時に聞きたくなくても聞いちゃうからなんだろうけど。ここでとんでもなく残酷な運命を言い渡された魂って・・・上では書きませんでしたが「天界の生活が居心地良すぎて、魂は母の体内に戻るのを嫌がる。そこでライラは魂の両脇を抑え強引に戻す」という話もあるんです。なんか、「イヤだー!俺はそんな残酷な運命に従って生きたくないー!」って泣き叫ぶ魂を、ライラが複数で押さえ込みながら戻すシーンが頭に浮かんだ(笑)。
 まー、そもそも俺は「運命は神によって定まっている」という考え自体が好きではないんですけどね。なんつーか、「運命は変えられる!」みたいな、熱血主人公な考え方が好きなので(笑)。

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